ライセンスビジネスの基礎

(5)マーケティング・コミュニケーションの役割

 昨年、カリフォルニア州パームスプリング州で開かれたLIMAエグゼクティブ・ライセンシング会議で、デザイン・プラス社長メイヤー・ジャネット氏は次のように述べました。

 ライセンシングとマーケティングが手を携えることは難しいことだとわかりました。なぜならそれぞれ異なるマネジメント文化から派生し、ブランド意識化時代の手段としてのライセンシング本来の価値は、受け入れられることがないからです。これは時おり、情報や予算に関してライセンシング部門がマーケティング・ループから取り残される結果を招くのです。
 マーケティング部門は宣伝に何百万もかけることに何の問題もありませんが、ライセンシング企業を成功に導く手段に投資することには躊躇するのです。それは、今のところその効力を測る術がないからです。(LIMA, 1996b)

 高まる意識、キャンペーンによって得られる信用、プロパティあるいはブランドの消費関連を測定することが難しいため、ライセンシングの結果 や効力は経済的側面からは計りがたいのです。
 そのような不確定な要素に関わらず、マーケティング専門家上層部においては、その傾向が変わりつつあります。おびただしい数の事業、分野、市場経路を問わず、多くの企業、ビジネス・パートナー、ライセンシー、小売業者にとって、ライセンシングはもはや副業ではなく、総合的マーケティング戦略においてその重要度を増しています。特にマーケティング・コミュニケーションで、ライセンシングは貴重な役割を果 たしています。
 このような事業へのアプローチは、既存の方法の中で最有力かつ最も効率のよいマーケティング手段だからです。(Battersby/Grimes, 1999, p.190)

マーケティング・コミュニケーションの定義

 マーケティング・コミュニケーションという言葉には、一般に当てはまる定義がありません。内容については様々な解釈がありますが、マーケッターたちの多くは、DeLozier(1976)の定義を支持しており、その定義はマーケティング協会でも引用されています。

 その定義とは、「市場集合体の中で望ましい一連の反応を意図的に引き起こすとともに、市場に統合した一連の刺激を与えるプロセスであり(中略)、それを受け取る経路を築き、現在の企業のメッセージを修正し、新しいコミュニケーションの機会を識別するために、市場からのメッセージを解釈して、作用させること」です。

 マーケティング業者や専門家の多くは、マーケティング・コミュニケーションのプロセスを理解するためには、伝達プロセスの複雑性、特にそのやりとりの概念の複雑性を認識するという見解で一致しています。(Berndt/Hermanns, 1993, p.21)

 そのやりとりが行われるためには、その過程に参加し、何か価値のあるものを相互に与えることのできる当事者が少なくとも二者以上いなくてはなりません。(Fill, 1995, p.1)
 つまり、マーケティング・コミュニケーションは、メッセージの受け手とメッセージの送り手、あるいは情報源とが、経験を分かち合うことなのです。
 コミュニケーションは、企業に潜在的な消費者情報を提供し、過去の取引で得た利益を長年の消費者に気づかせると同時に、提示された情報も認識させる機会を与えるため、すべてのやりとりの過程において、非常に重要なものです。

 マーケティング・コミュニケーションのもう一つの利点は、そこから生まれるイメージを通 して、それぞれのブランドを個別化できるということです。競合する製品やブランドを区別することが難しい市場において、これは特に重要なことです。(Fill, 1995, p2)
 マーケティング・コミュニケーションの手段はもともと、広告、販売促進、広報、個別販売という4つの要素で構成されています。しかし、変わり行く市場の状況に対応して新しいコミュニケーション・アプローチが発達し、他の手段も使われるようになっています。(Fill, 1995, p.6)
 消費者ベースブランドの公平性から見ると、この新しい手段は利にかなっています。なぜなら、例えばプロモーショナル・ライセンシングは、ブランド知識や、最終的には販売に効果を与える大変効率のよい方法だからです。(Keller, 1998, p.73)

マーケティング・コミュニケーション:
プロモーショナル・ライセンシングとブランドの公平性

 製品、価格、場所に加えて、プロモーションはマーケティング構成の要素とされるため、まとめて「4P」と呼ばれます。マーケティング構成の他の要素を通じて生じる重要なコミュニケーションは他にもありすが、ここではプロモーショナル・ライセンシングを中心にとりあげます。それはブランドの集合体と認知の品質を通じてブランド公平性に作用する機能に大変すぐれているからです。(Keller, 1998, p.221)

 

図:ブランド公平性へのマーケティング・コミュニケーション機能の効果
(Keller, 1998, p.502の図を脚色)

 

 マーケティング・コミュニケーションの役目は、ブランドを記憶にとどめ、有力で好ましく、独自性のある集合体との結びつきを確立することで、ブランドの公平性に貢献することです。(Keller, 1998, p.73)
 プロモーションは、マーケティングの申し出をある狙いを定めたグループに伝える方法、つまり、ブランド意識とブランド・イメージを確立することです。(Fill, 1995, p.4)
 ブランド公平性は、マーケティングとプロモーション活動によって築かれるこの情報構成ネットワークの最終結果です。その情報構成ネットワークを説明すると、上記の図のようになります。

 この図が意味していることの一つは、プロモーショナル・ライセンシングを通 して消費者は有力なブランドの利益やマーケティング・コミュニケーションの程度により反応しやすいことは明らかだということです。
 多額の収益と低コストに加え、ブランドの安定性が新しい消費者を惹きつけ、競合活動を阻止し、ライン拡張を導入し、国際的ボーダーラインを超えることが最も重要なのです。(Keller, 1998, p.53)

統合的マーケティング・コミュニケーションのためのシステム・モデル

 先ほど述べたように、ブランド意識や前向きなブランド・イメージを作ることで生まれる利益は、マーケティング・コミュニケーションへの消費者の反応に基づいています。この反応を説明する方法の一つとして、以下のような効果 モデルのヒエラルキーがあります。

 

図:効果連鎖のヒエラルキー
(Lavidge/Steiner, 1961, p.61より抜粋)

 

 Fill(1995)によると、このモデルは消費者はマーケティング・コミュニケーションに基づき、意識から実際の購買へと連続した心理的段階を経て行動すると仮定しています。その条件は、一連の心理効果は、次の段階へと進む前に、それぞれの段階で必要な充足感を伴って起こらなければならないということです。(p.230)

 効果的なマーケティング・コミュニケーション・プログラムを作る上で、明らかに難しいのは、消費者を説得するためにどの段階でも失敗があってはならないということです。その結果マーケッターは、6つの段階それぞれが持つ有望性をできるだけ高める試みをしなくてはなりません。(Keller, 1998, p.220)
 しかし、そのようにすればそれを成し遂げることができるのでしょうか? 実際、公平性に重きを置いたブランドのためのマーケティング・コミュニケーション・プログラムは、消費者によってその行程が異なります。なぜなら、消費者の頭にはすでに予備知識が備わっているからです。(Keller, 1998, p.64)
 これは、築きあげられたブランド、名称、ロゴ、著作権あるいはその他の知的プロパティが持つ意識、認識、公開、信用、そして有力で好ましい独自の連帯性が商業的なライセンシングにおいて非常に重要であることを意味しています。
 それは、ヒエラルキーの様々なステージにおいて消費者が経験する有望性を高めているものでもあります。また、新しい顧客を魅了すると同時に、ある顧客に狙いを定めメッセージを伝えることもできるのです。(Battersby/Grimes, 1999, p.190)

総合マーケティング・コミュニケーション・プログラムの発達

 総合マーケティング・コミュニケーション・プログラムを作るためには、様々な方法があります。最も大切なのは、マーケティング・プログラム全体が、一貫した補完的なブランド・イメージを築くために組み立てられるべきだということです。これは、どの総合マーケティング・プログラムも2つの側面 から評価されるべきことを意味しています。
 その2つとは、すなわち一貫性と補完性です。一貫性においては、知識構造ネットワークを作るために使われる様々なコミュニケーション・オプションに矛盾がないこと、つまり、相互に補強しあっていることが求められます。補完性とは、異なるコミュニケーション・オプションにはそれぞれ異なる強さがあり、異なる目的を達成し、異なる市場部分を視野に入れることもできるという事実に起因した考え方です。(Keller, 1998, p.257)
 しかし、コミュニケーション・オプションは、ある一つのオプションの力が、他のオプションの不利な面 をカバーできるように組み立てられる必要があります。つまり、理想的なコミュニケーション・プログラムとは、いくつかの核となる意味合いを共有しつつ、有利な面 での資本化においては異なり、互いの不利な面を補填するたくさんのオプションがあるということになります。(Keller, 1998, p.257)
 マーケッターたちがブランド意識を向上させるためにコミュニケーション戦略を考慮するとき、消費者の頭に知識構造を植え付けるために、可能な限りのコミュニケーション・オプションを評価する必要性があるのは、このためなのです。

 ブランド連帯性強化のためには、様々なマーケティング・コミュニケーションにおいてブランド要素が統合されていることが大変重要です。(Keller, 1998, p.74)
 では、ライセンシング・プログラムを実行する、あるいは運営するとはどういう意味なのでしょう? マーケティング・コミュニケーションとライセンス・プロパティの明らかな結びつきによって、より強力な連帯性が生まれます。ライセンシングを通 して、製品包装やビジネス現場に使用される特定可能なキャラクター、レーベル、ブランド、名称、スローガンあるいは商標は、コミュニケーション効果のための手がかりや暗示となります。すなわち、商標やキャラクターあるいは特定された特徴などが打ち出す認識やイメージから、消費者はライセンス製品に、よりお金を費やすようになるのです。(Keller, 1998, p.65)

 ライセンシング・プログラムは、プロパティの種類、ライセンサーの目的、ターゲットとする相手、入手可能な情報に応じて異なります。ライセンシング事業に着手する前に、その当事者は宣伝、あるいはむしろ狙った顧客にプロパティを伝えるために明確な戦略をたてる必要があります。
 プロパティが成長するどの段階でも起こりうる宣伝的な支援は、幅広い要素を含むことができますが、主要な要素はプロパティ自体です。成功するためには、宣伝的な結びつきが革新的で独自性がなくてはなりません。
 有力な宣伝要素はライセンス商品の販売に拍車をかけ、プロパティ意識を確立するのに役立ちます。宣伝手段(例えばパッケージ商品を使っての宣伝など)あるいはエンターテイメント媒体の利用(例えば店内でのコンセプト・ショー、ライブ・イベント、有名人支援者や衣装をつけたキャラクターの登場など)は、プロパティの認識度を最大化するために、特にプロパティ立ち上げの時期に非常に重要になります。(Raugust, 1995, p.147)
 このような宣伝的結びつきがプロパティを強化し、顧客の意識を持続することでその息の長さを維持することにも役立つのです。(Raugust, 1995, p.73)
 それは、プロパティの消費者の興味を保持するだけでなく、新しいファンを広げるという利点があります。宣伝的な結びつきは、長期、短期どちらのプロパティにもふさわしく、消費者と顧客を同時に対象とすることがよくあります。それはどちら側にも大きなメリットを保証するものです。ライセンサーにとっては、宣伝的ラインセンシングは収入を増やし、プロパティにさらなる公開が加わることで、そのプロパティに付加価値を与えるものだと言えます。ライセンシーにとっては、プロパティの付加的宣伝による利益の大部分は、消費者意識と高額な収益の発生の範囲内にあります。(Raugust, 1995, p.145)

The following is an abstract of a Diploma Thesis written by Sabina Gockel at Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz at the Department of Applied Linguistics and Cultural Sciences in Germersheim in the year of 1999/2000, supervised by Prof. Dr. Karl-Heinz Stoll and Dr. Donald Kiraly and appears here by express permission of the author. As such it falls under our copyright and may not be copied, reprinted or sold in any fashion without the permission of LIMA.

 ライセンスビジネスの基礎
 (1) ライセンスビジネス:その基礎と歴史的背景
 (2)米国におけるライセンシングの歴史
 (3)ライセンスに携わる人々
 (4)ライセンシングの種類
 (5)マーケティング・コミュニケーションの役割
 (6)国際ライセンスビジネス

 

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