ライセンスビジネスの基礎

(6)国際ライセンスビジネス

 近年、グローバル化がテーマの中心となり、21世紀を迎えた今、我々は初めて、本当の意味での「グローバル・エコノミー」時代に生きています。新しい市場は至る所で誕生し、ライセンシング・ビジネスにおいても、国内からグローバルなコミュニケーションへの移行はライセンシング活動の国際化にともなって拡大しています。

 米ライセンシング業界の見積もりによると、今や国際的な分野は、全ライセンス製品収益のおよそ三分の一を占めていることがわかります。それほど昔のことではありませんが、国際的に成功を収めるプロパティのほとんどはアメリカで生まれ、発達し、国際市場でライセンス化されました。(Raugust, 1995, p.133)
 この現象が引き続いている一方、さらに多くの国際的なライセンサーが事業に参入するか、既存の活動を拡大し、長年待ち望まれた国際的な土俵でのプロパティのやりとりが期待できるようになりました。
 新しいプロパティのクリエイターたちが、できるだけ国際的な魅力に的を絞ろうと努力するのは自然な流れであり、プロパティ開発やマーケティングへの投資額はかなり増大しています。製品の可能性の幅を保証するために、プロパティを国際的に利用することで、マーケティング経費と宣伝量を抑えることができます。そうでなければ、プロパティごとのプロモーションが必要になるからです。(Hankinson, 1996, p.5)
 海外への投資や自社製品の輸出をしない、あるいは希望しない企業にとっても、国際ライセンシングが非常に重要なメリットであることは間違いありませんが、ライセンサーはいくつかの重要事項を頭にとどめておく必要があります。それは、異なる領域には、文化、言葉、法律、経済といった様々な違いがあるということです。グローバルな視野でとらえるためには、始点となる国を越えてマーケットを理解する能力やライセンスが認められている国の政治的、経済的状況の知識などが必要になります。最も重要なのは、幅広い消費者行動や、見込みのあるライセンシー、彼らの要求や実力を理解することです。次の章では、ライセンサーが国際ビジネスを始める前に考慮すべき重要点をとりあげます。

新地域参入前の重要事項

 企業が外国の新しいマーケット開発のために調査を始めると、ある国で効果的なライセンシング戦略が、果たして別の国でも通用するかどうかの疑問がもちあがります。つまりライセンサーにとって、それぞれの国には特徴に基づく違いがあるので、全く異なる領域としてとらえることが一番大切なのです。ライセンシング戦略に対してだけでなく、マーケット構造などあらゆる面において、国ごとの違いが存在します。

 ライセンシングは契約上の合意に基づくため、ライセンサーは特に国ごとに異なる法律には特に注意を払わなければなりません。法律の違いによって、契約の構造に影響が出ることもあります。知的所有権法に限らず、税法、独占禁止法、関税法についても同じです。(Battersby/Grimes, 1999, p.104)

 外国でのライセンシングは、ライセンスを認める国の経済状況についての知識も必要になります。市場の成長度合いの違いも出てくるでしょう。高い経済成長率の伸びを見せる国がある一方、停滞する国もあり、結果的に製品の発達や価格同様、採算性の規準に影響を及ぼすこともあります。(Raugaust, 1995, p.142)
 小売構造の違いから、ライセンサーは、狙った地域での適切な方法や、地元の小売業者がどのようにライセンス商品を買うのかを見極めなくてはなりません。小売業者がどのようにライセンス商品を購入するかは、地域性の違いによるところがしばしばあります。その地域の傾向は、どのようなプロパティが成功し、特定の地域で売れるかを決定する重要事項なのです。(Raugust, 1995, p.135)
 言葉についての配慮も重要なポイントです。言葉は国によって違うため、ライセンシーのパッケージにも影響します。製品の規格も異なるため、製品自体に影響が出ることもあります。
 ブランド・ライセンシングに関しては、ブランドの名前も問題になりがちです。それは、規定により通 常は翻訳されることがないからです。しかし、言葉が異なると全く違う意味になることから、単に国際的な目的にはそぐわないブランド名もいくつかあります。例えば、"The Chevy Nova"という名前にスペイン人は戸惑いを覚えるかもしれません。"no va"はスペイン語で「行くつもりがない」という意味だからです。

 国際ライセンシングにおける無数の違いに関わらず、ライセンシング・プログラムのグローバル化は続いています。そのような問題は市場構造における違いがどのようにライセンス製品の売れ行きに影響するのか、望む結果を導くための様々な戦略の効果を調査する必要性を示唆しています。
 多くの困難を抱えつつ成功するライセンシング・プログラムを生み出すために、世界中のライセンシング専門家たちにとって一番必要なことは、それぞれの必要に対して開放的であり、必要な適応力を持とうとする姿勢です。

グローバルなライセンシング戦略に対する言葉と文化の影響

 さらに多くの製品分野で、グローバルな側面を立ち上げる力量は成功への最重要事項です。しかし、自国の市場あるいは選ばれた地域で成功を収めている多くのプロパティが、そのまま海外で通用するとは限りません。その理由は何でしょうか?
 ライセンシングの専門家たちはまず、ライセンシング戦略を構築、実行する前に、ターゲットは異文化の枠組みの中の、独立した環境にいることを念頭に置かなくてはなりません。このような文化の枠組みは、言葉や社会的、社会経済的要因と同じく、消費者のニーズを形成するものです。海外市場においてプロパティを成功に導くためには、相手の具体的な要求と一致する「適合する」ライセンシング戦略がふさわしいといえます。そのようなライセンシング戦略は、狙いとなる市場部分において、プロパティを適切に配置できるよう組み立てられるべきです。

 以下の図はライセンス製品の売上に対する言葉と文化の有力な要因を概念的モデルとして表したものです。さらに、この図には記入されていませんが、消費者の情報過程と選択決定に影響を与える多くの外的要因があります。

(図:Roth, 1995, p.165を脚色)

 この先は、言葉や文化が消費者のニーズを形成し、後にグローバルなライセンシング戦略に影響を及ぼす方法を簡単に説明します。

文化の違い

 著書"Primitive Culture"の中でE.B. Tylor は、文化は知識、信念、芸術、規律、法律、習慣、その他社会の一員として人が習得する素質や慣習などの複合体であると定義しています。個人はそれぞれ文化の生産物であるという事実は、個人の考え方に影響を与え、価値観を構成し、態度、基準、信念、習慣、知識、素質やライフスタイルなどに影響を及ぼす環境的特徴の一つとされています。(Roth, 1995, p.164)
 刺激に対して生まれ持った解釈とともに育ち、たいていは異文化に接する機会をあまり持たないために、自分の解釈が文化に影響されたものだとは気づかないものです。(Britt, 1978, p.189)
 文化は消費者行動に関係するため、海外のライセンシングにおける重要な熟慮も広まり、国際ライセンシング・プログラムを発展させる前に、異文化の枠組みがあることを示しています。(Raugust, 1995, p.135)

 Hofstede(1984)は、異文化価値のシステムについての研究で、消費者行動とブランド・イメージに関係する文化の側面をあげています。それは、力の距離、不確かな回避、個人主義の3つです。
 国際ライセンシング戦略を作り、実践するために、文化は社会の不均衡性に役立つとする力の距離は特に重要です。高い力の距離を持つ文化は、社会意識が高まり、社会階層と経済階層に境界線を引く名声や裕福さの重要性が強調される傾向にあります。この文化における消費者の意志決定は、彼らが奮闘している階層に従う必要性に明らかに突き動かされています。(Hofstede 1984; Inkeles 1960; Lenski 1966)
 消費者の要求と同様に、ライセンシング戦略については、社会的ブランド・イメージを生み出すプロパティは力の距離が高い文化により適していると言えます。なぜなら、人々は規律やしきたりに応じて行動するように多いに動機づけられているからです。(Roth, 1995, p.163)

 他にも、Steuart Henderson Brittは著書モ Psychological Principles of Marketing and Consumerモの中で、グローバルなライセンシング戦略がどのように文化の影響を受けるかについて、このように説明しています。それは、文化的背景と関連のないメッセージより、文化的背景の方が印象に残る可能性が高いということに原因しています。(p. 296)
  そのため、ライセンス製品のための中央集権化した市場戦略は、地方の習慣や伝統の枠を出ない宣伝をしています。他の国での売上を目指すならば、宣伝は積極的なものにするべきです。

言葉

 文化的背景がある程度の情報を引き合いに出すのと同じ分だけ、消費者は暗黙のうちに得られる手がかりをもとに推論します。その手がかりとは、消費者が広告や口答、文章などから推測するある程度の情報で、言葉でない場合、文章でない場合もあります。しかし、言葉と文化は元々関係があるのではなく、実際には親密な距離にいるということなのです。

 用語集は文化の索引であることから、それ全体はおそらく文化であると言えます。そこには大いに相関関係があると考えられます。用語集は意味を表し、つまりそれは文化であるということです。しかし、言語の言語的かつ構造的部分と文化のより純粋な相関関係は間接的なものです。つまり、言語は文化の変化にやや鈍感なのです。(Haugen, 1958, p.774)

 言語が文化の一部であり、我々の起こす全ての行動にととまらず、我々が何をどのように習得するかにも影響を与えるのは明らかです。(Britt, 1978, p.293)
 言葉は学習行動であり、言葉と文化は大変相互関係性があります。どの言葉で作られた単語や文章もその文化の枠内でだけ意味をなすものだからです。言葉の認識に違いがあるため、あるメッセージが同じように受け入れられ、理解されるかどうかはわかりません。従って認知行動における言葉の影響は、説得力のあるコミュニケーションを引き起こし、消費者行動に強い影響を与えます。(Britt, 1978, p.294)
 つまり、メッセージが特定の行動において精神的な関わりを狙うとき、そのメッセージが効果的であるためには、意志を伝える側、受け取る側双方が言葉から同じ文化的意味を推測しなくてはなりません。
 一つの文化に固執し、他を排除する側面に重きをおくような国際的コミュニケーションでは、その効果に限度があると言えます。(Britt, 1978, p.294)
 結果的に、グローバルなライセンシングプログラムを構築し、実践するためには、コミュニケーションにおいて効果的であることを意識しつつ、ライセンサーは意図的に大規模な大衆を除外し、むしろ実際の狙いとなる対象に的を絞るべきです。その対象と明確な意志疎通 を交わすためには、類似性を利用して彼らに近づく方法をさがすべきでしょう。

The following is an abstract of a Diploma Thesis written by Sabina Gockel at Johannes Gutenberg-Universitaet Mainz at the Department of Applied Linguistics and Cultural Sciences in Germersheim in the year of 1999/2000, supervised by Prof. Dr. Karl-Heinz Stoll and Dr. Donald Kiraly and appears here by express permission of the author. As such it falls under our copyright and may not be copied, reprinted or sold in any fashion without the permission of LIMA.

 ライセンスビジネスの基礎
 (1)ライセンスビジネス:その基礎と歴史的背景
 (2)米国におけるライセンシングの歴史
 (3)ライセンスに携わる人々
 (4)ライセンシングの種類
 (5)マーケティング・コミュニケーションの役割
 (6)国際ライセンスビジネス

 

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