製造業者は、ライセンサーからの財政面での要求とマーケティング業務の委託、そしてリテーラーがいかなるレベルのリスクも負いたがらないという状況に挟まれ、今日ライセンス商品ビジネスにおいてかつてないプレッシャーに直面しています。今日のライセンシング商品ビジネスに携わる製造業者が直面する重要な問題はいくつかあり、それらの問題の中で最も重要なものを何点か要約し、総括をまとめてみようと思います。
−ロイヤルティ・トレンド
ロイヤルティレートとミニマムギャランティの両方を要求してくるライセンサーは、増えている傾向にあります。しかしながら、ライセンシング取引に関する著名な出版物が報告していたり、複数の商品カテゴリーを扱っている製造業者との会話からも確認されるように、現実としてはミニマムギャランティ契約と同様に、ロイヤルティレートは安定を保っているか、もしくは下降傾向にあるかのどちらかなのです。大部分の商品カテゴリーを占めているエンターテインメント/キャラクターを基にしたプロパティの平均ロイヤルティは純売上の12%、FOB価格の14%ですが、いくつかのライセンサーや一部の商品群では既にこのレベルになっています。‘マストアイテム’プロパティ商品以外であれば、10%レベルは非常に現実性があります。
ライセンシングの全てにおいて、覚えておくべき重要なことは、常に交渉可能であるということです。交渉の際は、ロイヤルティレベルとミニマムギャランティがますます関係してきます。より高い前払金、及び/もしくはミニマムギャランティを提示するつもりであれば、10%のロイヤルティレートを獲得することが見込めるでしょう。反対に、12%のロイヤルティを支払わなければならないような場合であれば、より低い前払金とミニマムギャランティを交渉することに成功している製造業者もいるのです。
実際、経済が停滞している中で、リテーラーはリスクを少なくしたいと望んでおり、それによって、ますます細分化してきているライセンシング市場において、資金繰りに苦しんでいるライセンサーは多いのです。男児、女児、大人向けのさまざまなプロパティが提案される今日、製造業者は以前に比べさらに交渉力を身に付けています。製造業者がこのことに気付き、彼らの持つ優位性を活かすことは重要だといえます。
−取引決定における課題
ロイヤルティ交渉以外にも、製造業者がより良いライセンス契約を結ぶ為の交渉において、重要なリスクファクター(危険要素)があります。概して、ライセンサーは収益減少に直面し続けているので、同じカテゴリーで同じ/類似した商品を扱う複数の製造業者にライセンス許諾をしたがっています。契約書において非独占許諾と謳っているにもかかわらず、ある特定の製造カテゴリーにおいて他の誰にもライセンス許諾はしないというライセンサーの慣習的な契約は、今日の経済環境において常に守られるとは限らないのです。可能なならいつでも、製造業者は独占許諾権を、つまり、同様のライセンスプロパティ、及び同様の/類似の商品を製造することを他の誰も許諾されてはならない、ということを主張する必要があります。
ロイヤルティ以外では、‘共同マーケティング基金寄付’や‘海賊商品対策基金’要求などが、ライセンサーが製造業者からのキャッシュフローを伸ばそうとする際の手段であると言えます。今日では、共同マーケティング基金の支払いを要求するライセンサーはほとんどおらず、(私の知る限りでは)海賊商品対策基金への貢献を要求するライセンサーのみいる、という状況です。Aクラスのプロパティや非常に売れているプロパティに関しては、そのような貢献は拒否出来ないかもしれません。無名の若いプロパティに関しては、それらの基金への貢献は交渉次第となるでしょう。
−リテール開発チーム
リテーラー向けの、プロパティの現場でのマーケティングに関しては、主なライセンシング会社に雇われたリテールビジネス開発チームが、定期的に有力リテーラーとミーティングを行い、彼らのプロパティの後押しをしています。これらのミーティングの目的は、販売エリアのディスプレイやリテーラーが扱うプロパティを目玉としたさまざまなプロモーションを促進するだけでなく、アパレルカテゴリーにおいてますます頻繁に行われているように(他のカテゴリーへも移行してきていますが)、時に直接リテールライセンス契約を交渉することにあります。これらのミーティングで話し合われることは、常に各リテーラーの好む製造業者についてであります。有力なリテーラーと強い関係を築いている、もしくは築いていない場合でも、ライセンサーのリテールビジネス開発チームはこのことについて尋ねるでしょう。現在、特定のリテールチャンネルに属していない場合、もしくは特定のリテーラーに販売していない場合は、これらのミーティングは、リテーラーにどのようなライセンス商品を扱っているかを知らせるのに良い方法となります。ライセンス商品のディスプレイが特定のリテーラーの場所に用意される場合は、そのブランドのものとして見られ、売上や流通チャンネルが増えることが期待出来るでしょう。これはライセンサーのリテールビジネス開発チームが行うことのひとつであり、非常に役立つものです。従って、製造業者が重要なライセンサーのリテールビジネス開発チームと直接やり取りをするようになること、そして自らのライセンス商品が売れる可能性のある商品ブランドのプロモーションと一緒に展示され、販売されることを確実にすることは、賢明であると言えます。
ライセンサーのリテールビジネス開発チームが持つマイナス面としては、時に意外な方法で製造業者に損害を与えることがあるということです。製造業者が有力リテーラーのもとで特定のライセンスブランドにおいて大きな成功をつかむと、ライセンサーのリテールビジネス開発チームは、その成功を利用して同じリテーラーのもとにさらに他の商品を置く為に動き出します。これは、しばしばリテーラーがライセンサーや製造業者に対して特別な‘お願い’を要求してくることへとつながります。例えば、商品の独占権に制限をなくす、であるとか、GWPを無料にする、特別な/独占的な商品の組み合わせや商品デザインを可能にする、というようなことがあげられます。リテールバイヤーが製造業者に対して更に何かを欲しがる場合は、彼らは製造業者のライセンサーを通して何かをリクエストすることに慣れてしまっているということです。従って、製造業者はバイヤーに対し、特定の独占的な商品は非常に高額であることを伝えなければならないだけでなく、ライセンサーからもバイヤーに対してそのことを伝えてもらうようにしなければならない、という困った状況にあると実感するのです。製造業者とライセンサーのリテールビジネス開発チームが、定期的かつ建設的に直接やりとりをすることは、これらの状況を避ける(もしくはより簡単に解決する)ことに役立ち、またそのビジネス開発チームは製造業者の味方となって仕事を進めていくことへとつながります。
製造業者がライセンサーのリテールビジネス開発チームとのやりとりに時間を投資することは、多くの労力を必要とするかもしれません。製造業コンサルタントにサポートを依頼することも非常に良いアイディアと言えるでしょう。例えば、同じライセンスを持つ製造業者がいる場合に、代理でライセンサーのリテールビジネス開発チームとのやり取りを行ってもらうのは非常に役に立ちます。重要なことは、ほとんどのライセンサーは主要なリテーラーとやり取りをする場合、自らの扱うプロパティブランドの担当者として、リテールビジネス開発チームを所有している、ということです。その理由としては、ライセンサーにとって、同一の商品カテゴリーにおいて複数のライセンシーにさまざまなプロパティのライセンス許諾をするよりも、特定の商品カテゴリーにおいて1社のライセンシーを信用する方が、より経済的に効率が良い、ということがあげられます。これは、ライセンシング契約における最近の傾向として見られる、ひとつのやり方です。
−ライブラリー・ディ−ル
今日のライセンシングにおいて、ライブラリー・ディ−ルはライセンシー、及びライセンサーの双方にとって有益なものと言えます。ライセンサーに関しては、非常に厳しいリテール環境においてビジネスを行っている各商品カテゴリーのライセンシー1社ずつを理解し、彼らと取引をすることによって、ライセンシーは全ての時間と資源をより経済的に効率の良い方法で利用することが出来ます。工場や財務上の調査をする必要はほとんどなく、特定の商品カテゴリーをより深く耕すことに多くの時間を費やすことが出来るのです。また、ライブラリー・ディールにおいては、ライセンサーは新しいプロパティを開発するかなり早い段階から、重要な商品カテゴリーにおいてサポートを得られることを保証されていることもあるでしょう。そのようなライセンサーは、主要なリテーラーに対して新しいブランドプロパティのビジネスを開始することが出来、その商品を製造するにあたり、すでに‘契約済み’の質の良い商品を製造する製造業者を指定することが出来るのです。また、ますます分裂化し、リスクを伴う今日のライセンス市場を考えると、ライセンサーの懐にあるものは小さくない、と言えるでしょう。
ライセンシーに関しては、リブラリー・ディ−ルは、特定の商品カテゴリーにおける政策的なビジネス展開に関して、ライセンシーと同じような方法で役立つものです。さらに、ライブラリー・ディ−ルによってライセンシーは商品をより速く展開でき、すぐに市場に出すことが出来るのです。また、あるライセンサー1社から許諾された全てのプロパティによって得られた売上に対するロイヤルティを担保によって保証することで、ミニマムギャランティーに関しては、ライセンシーの財務的なリスクを押さえることも可能にします。ミニマムギャランティーを稼ぎ出せないというリスクは、質の良い商品を製造する製造業者が今日のライセンス市場において若いプロパティを支持しない主な理由のひとつですが、ライブラリー・ディ−ルはより財務的リスクを押さえて、ライセンス商品ビジネスを育成する機会をライセンシーに提供するのです。
−結論
認知度の低いプロパティの商品を製造し、多くの在庫が残ってしまったり、売上増加に伴って、リテーラーからのチャージバック(いわゆる、分引き)があったり、ライセンサーによるレベルの低い商品承認プロセスの管理やその他にもいろいろありますが、今日、ライセンス商品の製造業者達が直面しているリスクは多数あります。しかしながら、ライセンス商品販売の歴史が1980年代初頭より証明してきていますが、ライセンスは、アメリカ合衆国における不景気のサイクルに左右されないものなのです。2003年の小売環境は、全体的に不景気であるにもかかわらず、ライセンス商品の人気によって、記録的な売上を見せる製造業者もいるのです。今日の製造業者にとって、ライセンシングは、これまで以上に強く、また成長の見込みが持てるビジネスで有り続けることでしょう。